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【健康コラム】乳酸菌と乳酸と筋肉の疲労 2019
10/10

 この前、お客様と以下のようなやりとりがありまして。(わかりやすいように、一部やりとりを改変しています。ご了承ください)

お客様「ヨーグルトとかに入っている乳酸菌って身体にいいっていうじゃない」

ワタクシ「そうですねー、乳酸菌などの善玉菌とよばれるものを食べると、お通じがよくなるとか、おならが臭くなくなるとか、腸の中の環境がよくなるっていわれてますねー」

お客様「でもさー、筋肉を使いすぎて筋肉痛になると筋肉に乳酸がたまるっていうじゃない、あの乳酸とはちがうの?」

ワタクシ「あ、ちょっと違いますね。ヤ◯ルトとかに入っているのは乳酸『菌』であって、腸のなかで食べ物のカスを分解して乳酸を作り出す生き物なんですね。

で、筋肉にたまる乳酸は、筋肉をつかう為のエネルギーを代謝することでできる老廃物、いわば筋肉のおしっこのようなものだと考えていただければ……」

お客様「えー?おんなじ乳酸なのに、なんで腸にはよくて筋肉にはダメなの?筋肉痛の時に乳酸飲料とか飲みすぎると、吸収されて筋肉痛ひどくなったりしちゃわないの?」

ワタクシ「(……うっ……そう言われるとよくわからん……-_-;)と、とりあえずは、そういうお話は聞いたことがないので、安心して飲んでいいとおもいますよ……(超ごまかし)」

 ……というような鋭いご質問をいただき、その場で上手に答えられず、ちょっとはぐらかしてしまいました。Nさん、ごめんなさい。この場を借りてちゃんと回答いたします。

 いやー、教科書とか、ネットとかすごい読み漁っちゃいましたが、微妙にまだ怪しい(生理学と化学、超ニガテだったんです……ごめんなさい)。

 一応ワタクシなりに理解したことを書いてみますが、そりゃ違うよというご指摘がありましたら、ぬくまる屋公式HP問い合わせフォーム経由でご指南いただけると助かります。ご意見頂戴しましたら、ぜひ公開させていただきたく思います。

1筋肉の中でできる乳酸と、その働き

 筋肉を動かす時にはエネルギーを使います。

 このエネルギーの大元は、糖(グルコース)です。

 この糖が筋肉にある細胞の中で分解されてATP(アデノシン3リン酸)という、筋肉を動かすガソリンに変わります。

 さて、この分解する過程を解糖系といいますが、酸素とビタミンB群が充分在る状態で(つまり有酸素運動のときね)糖が解糖されると、たくさんATPができる。そして、ATPがADP(アデノシン2リン酸)と(P)リン酸に分解されるときに、大きな力をだすことができるのです。

 ところが、激しい運動で酸素が足りなくなってくると(つまり無酸素運動)、それでも筋肉の中の細胞は糖からATPを作ってくれるのですが、大部分の糖は乳酸になってしまいます。

 激しい運動のあとに血液をしらべると、乳酸の量が大変多くなっているので、この乳酸が筋肉疲労を引き起こしている原因なのではないかと、今までは言われてきました。

 ところが最近の研究では雲行きが変わってきています。

 どうやら疲労をひきおこしているのは乳酸ではないらしい説が21世紀にはいって飛び出してきました。

では、疲労を引き起こしているのはなんなのか?

 ATPが分解される時に出来るリン酸が、筋肉を収縮させる時に必要なカルシウムイオンと結合、筋肉を収縮させる動きを悪くして、筋肉のこわばった感じをつくりだしてだしているのではないか?という説。

 そしてFF(ファティーグファクター)という、活性酸素が細胞を傷つけた時に発生するたんぱく質が原因なのではないかという説。

このふたつの説が主流になってきました。

 と、なんとまあ、いままでずーっと乳酸に濡れ衣を着せてたわけです。乳酸、ごめん、悪者にしてごめん!

 じゃあ、激しい運動でたくさんできた乳酸はどうなるのか?

 これらは一時的に筋肉内にとどまったのち、酸素が供給されてくると、また細胞内にとりこまれ、再利用されてATPを作り出すんだとか……。さらに血中に放出されて肝臓に集められた乳酸は、グリコーゲン(体内で余った糖が、緊急時にエネルギーとして使えるよう肝臓に備蓄しておくために、形を変えたもの)に変化するんだとか……。

 がびーん!乳酸、筋疲労の原因どころか、再利用されて筋肉を動かすガソリン、ATPを作り出すのにすごく役立ってるじゃん!なんかごめん!すごく、ごめん!

 すみません、図は1996年発行の教科書(『目でみるからだのメカニズム』堺章著 医学書院)のもので、まだ乳酸を『疲労物質?』としていますが、これ以上にわかりやすい図を拾えなかったんです……。乳酸犯人じゃない説がでてきたのが2004年以降……FF説が出てきたのが2008年以降……まだまだこの分野は説が変わっていく可能性が高いです。

2腸の中でできる乳酸と、その働き

 腸の中では乳酸を作るのに、ヒトの細胞ではなく乳酸菌達がその役割を果たします。

 つまり、大腸までやってきた食べ物のカスの中に残っている糖を乳酸菌が自身の活動のために食べて、乳酸菌の中で解糖系が働いて、乳酸を作り出す……ま、いわば腸の中の乳酸は、乳酸菌のう◯このようなものなのですね(^_^;)。

 そして、出来た乳酸は腸の中を弱酸性に保ち、人体に有害なアンモニアなどの毒素を作る悪玉菌が腸内で活動しにくい環境を作り出します。

 また、乳酸は腸の蠕動運動(ぜんどううんどう:腸内の老廃物を体外に排出するために腸全体が動く)を促し、便秘を解消してくれます。さらには、カルシウムを吸収するのを助けてくれるのだそうです。乳酸、腸の中では超有能!

また、乳酸菌は、死骸となっても役にたちます。食物繊維とおなじように、悪玉菌を自らの身体にくっつけて道連れにして、う◯ことして体外に排出されていくのですね。

 死してなお、働くなんて……乳酸菌……お前もなんていいやつなんだ(T_T)!!

3で?結局、結局乳酸菌飲料って、筋肉が疲労している時に飲むと悪化するの?

悪化するもなにも、乳酸自体がどうやら疲労物質ではないらしいので……。というわけで、問題はないです。

 ところが、カ◯ピスなどは常温流通で発酵がすすみ過ぎないよう、乳酸菌を加熱殺菌しているのだそうで、腸に届くのは死菌のみ(冷蔵輸送のヨーグルトや、ヤク◯トなどは菌を生かしているものが多い)。それって意味あるの?と思わなくもないのですが。

 しかし、殺菌された飲料自体にも菌がつくりだした乳酸が含まれるし、ATPの材料になる糖分が大変高いので、むしろ疲労快復に役に立ちそうです。

 ただし、飲みすぎるとその糖分の高さ故、こんどは別の健康問題が生じるので、ほどほどにしてくださいね(こころからのお願い)。

 あ、それから全身の血流をよくすることは、筋肉中にだぶついた乳酸をはやめに肝臓におくりこみ、細胞のすみずみに酸素を行き渡らせ、筋肉疲労快復をはやめると思います。

 というわけで、激しい運動のあとの、軽い運動やマッサージ、鍼灸は筋肉疲労快復に効果的ですよ(←ここ、鍼灸マッサージ屋としては是非とも主張せねばならない)。スポーツや夏のご旅行で疲れた後に、お試しください(^_^)。

※この記事は2017年7月に『しんきゅうコンパス』に掲載したコラムの再掲になります。

西川口 蕨 鍼灸マッサージ

はり灸指圧治療 ぬくまる屋店主 あいざわゆきこ

しんきゅうコンパス『乳酸菌と乳酸と筋肉』 2017
07/14

ポータルサイト『しんきゅうコンパス』にて、コラムを掲載いたしました。全く予想してなかったところから飛んできたお客様の質問に答えるべく、奮闘した結果……すごく私も勉強させていただきました。医療業界、すごい勢いで情報が更新されていきます。常にアンテナ張って勉強せねばと痛感いたしました。ご笑覧ください。

https://s.shinq-compass.jp/salon/column/2884/13049/

乳酸……そんなことになってたのねー!!と調べながら叫びたい気分でした。

西川口 蕨 鍼灸マッサージ
はり灸指圧治療 ぬくまる屋 店主 あいざわゆきこ