【健康コラム】インフルエンザと麻黄湯と私 その2 2019
12/9
〜前回までのあらすじ〜
時は遡ること1年前。家人が突然インフルエンザを発症し、倒れてしまった!熱を出した状態の家人と寝起きを共にしていたので、私も確実にインフルエンザウイルスに侵されているに違いないと、発症の恐怖に震えるぬくまる屋店主あいざわ。
そこに、インフルエンザに効くと言われる漢方薬『麻黄湯(まおうとう)』が颯爽と現れた!
タイムリミットはあとわずか。麻黄湯にすがるあいざわにインフルエンザ発症回避の道はあるのか……!?
前回のコラムはこちら
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というわけで、家人が発熱してから約30時間あまりが経過。
私の喉の痛みも徐々に強くなり、肩甲骨の間に現れた肩こりも着々と勢力を拡大。ついに肘や腰まで鈍い痛みが出てくるようになりました。くう……これは一刻を争う事態。
幸いなことにその日は夜間の予約はなかったので、1時間ほど店を早じまいに。近所のドラッグストアで、『麻黄湯エキス顆粒』10包入を手に入れたのでした。
帰宅したのは夜の9時。家に帰って、食事をいただく前にさっそく麻黄湯1包をお湯に溶かしていただきます。
(^^)ここでちょこっと豆知識(^^)
おしりに『湯(とう)』の字がついている名前の漢方薬は、お湯に溶かして飲んだ方がよく効くと言われています。
いやー、イヤな匂いが湯気で立ち上って飲みにくいでしょ?と思われるかもしれませんが、そんなに匂いもなく、粉にむせることもないので、かえって飲みやすいです。
また、麻黄湯にはカンゾウもはいっているので(甘茶の成分ですね^^)、ほんのり甘くて、苦味もそこまできつくありません。その漢方薬が今の体調に合ったものだと、むしろ美味しく感じるといいます。
結果……うん、そこそこ美味しい。これはイケるかも。仕事後にほっと一息ティーブレイク。いいねえ……。
なんて落ち着いてる場合じゃなかった!冷凍ご飯を鍋にぶちこんで、ちゃっちゃとおじやを作ると、別室で寝ていた家人を起こして(←診療所から帰ってきてすぐに自分で布団移動させてました。えらい)、一緒におじやで夕飯終了。
ちゃっちゃと家人を布団に押し込んで、片付けて、お風呂入って、歯を磨いて11時までには私自身も布団に潜りこむことに成功。
そう、薬だけではインフルエンザは予防できません。まず基本のうがい、手洗い、マスク、栄養、そして睡眠の5点セットは必須。最低限、睡眠時間だけでも確保しないと。11時に寝られれば、7,8時間は睡眠が確保できます。
こんなのでは予防にならない、という人もいますが、組み合わせることで感染のリスクは確実に下がります
要は確率の問題。100%はありえません。
予防接種も同じこと。
今回の家人のように、予防接種をしていたのにインフルエンザに罹ってしまったので、インフルエンザ予防接種なんか意味ないよ、という人もいるでしょう。
でも、私のように毎年インフルエンザ予防接種をうつようになってから、罹ったことがないという人だって大勢います。
100%回避はありえない。でも、罹患確率は下げる。
その観点で、自分の体力や状況に応じた予防策を立ててほしいなと考えています。
それでも不幸にして罹ってしまったら、とにかく水分をたくさん摂って、もらった薬をちゃんと服用して、布団から離れない。
家人は午前中に処方されたゾフルーザを服用していましたが、その晩には早くも体温が37度台まで下がっていました。
タミフルなどはたしか5日間服用しないといけませんでしたが、最近のインフルエンザ治療薬って1回飲むだけでOKなんですって。すごいなー。うちみたいなめんどくさがり屋さんにとっては、ありがたいことです(※追記※ゾフルーザに関して、最近では耐性ウイルスが早くも出てきたということで、いろいろ騒ぎになってますが、どんな抗菌薬や抗ウイルス薬にも、必ずといっていいほど発生する問題です。要は乱用はダメという教訓だと思います)
さて、話を本題に戻します。翌朝。6時半に目覚めた私。
起きてそっと腰を布団の中で動かしてみます。……うん、痛みはない。喉と肩、肘の痛みはまだ残っていますが、頭痛などもなく。
恐る恐る布団から出て、しばらく部屋の中をウロウロしてもだるい感じはでてこない。
……これはイケそう!
コーヒーの代わりに、麻黄湯をお湯に溶かして朝のティーブレイク。喉の痛みは乾燥によるものだったらしく、喉がうるおってきたら大分楽になってきました。
麻黄湯は食前または食間に一日3回服用が目安とのこと。
朝ごはんをいただいてから、出勤。
お昼ごはんの前にやはり麻黄湯をお茶代わりに1包。
動いていたら、どんどん背中の痛みもなくなり、なんか体も以前より軽く超快調です。あら?あら?これはどうしたことかしら?頭もなんかすっきりして、苦手な事務仕事もはかどります。これはすごい!!
夜にはすっかり体中の痛みがなくなり、喉の痛みも消えました。むしろ普段より快調かも。なにしろ体が軽いし、動ける動ける♬どうやらインフルエンザも完全回避できた……かな?
もしかして、この冬ずーっと麻黄湯を飲み続ければ、インフルエンザも予防できるし、体も軽いし、一石二鳥じゃん?
…………なんて野望を抱いた時期が私にもありました。
その日もちゃんと7時間睡眠をキープ。翌日も麻黄湯を1日3回飲んで、布団に入ろうとしました
……が、なにかちょっと違和感。
変に心臓がドキドキしてます。脈もひどく力強く打っています。
んー?まあ、寒いからこんなこともあるかな?とたいして気にも留めず、そのまま床につきました。
〜そして、草木も眠る丑三つ時〜
唐突に目が覚めました。それこそマンガなら『カッ!』と擬音がつくくらい、パッチリと。え?え?ナニコレ?体は昼間の仕事で疲れて眠りたがっているのに、頭の中が変に覚めてて眠れない!!
頭がひどく興奮していて、そのまま部屋の中をゴリラのようにウロウロしまくる私。しかし、全く眠たくなる気配はなく。白湯を飲んでも駄目。ああ、どうしよう。
そうだ、こんなときには読み慣れた本を読むと眠くなるかも!昔から読みつけてるマンガを読むんだ!
本棚から、目についた『BANANAFISH』1巻を手に取ると(昔から20回以上読み返している愛読マンガです^_^;)布団に持ち込んで読み始めました。
が、マンガのセレクトを間違えました……久々に読むと超面白い!うっかりあともう1巻、あともう1巻と読み進め、気がついたら全19巻を読み終え、時刻は朝の6時……orz
馬鹿ですか……私は馬鹿ですか。
これは何事なんだろう?いくらなんでもおかしい。朝の麻黄湯をいただくのは一旦中止して、薬剤師をやっていた母に電話でお問い合わせ。こういうとき、身内に薬剤師いると便利です(^_^;)
私「ねー、急に眠れなくなっちゃったんだけど」
母「何よ、コーヒーでも飲みすぎた?」
私「いや、麻黄湯をこの2日間飲み続けただけなんだけど」
母「なんだ、あたりまえよ。麻黄湯ってエフェドリン入ってるんだから」
私「え?えふぇどりん?何それ?」
母「小さいころ喘息発作起こしたとき、気管支拡張剤使ってたでしょ?あの成分と同じ。あのときもあなたよく、夜中に布団から飛び出して異常興奮して猿みたいにきゃあきゃあ叫んでたよ。あなた薬すごい効きやすかったもんねー」
ま じ で す か ?
お母さん、娘のことを猿って…てか、エフェドリンって何?ググってみると、こんな記述が。
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エフェドリン(英: ephedrine)は、充血除去薬(特に気管支拡張剤)、または局部麻酔時の低血圧に対処するために使われる交感神経興奮剤で、漢方医学で生薬として用いられる裸子植物のマオウ(麻黄)Ephedra sinica Stapf に由来するアルカロイドである。(Wikipediaより引用)
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交感神経興奮剤……!確かに喘息の薬は、交感神経を興奮させることは知っていましたが(気道は交感神経優位で広がり、副交感神経優位で狭くなります)、まさかそれが、漢方の麻黄由来のものだったとは……!
そうか、やたら身体が軽くて動ける‥と思ったのは、交感神経興奮のせいだったのか(>_<)
えー?漢方薬って長期間飲んでも大丈夫なものじゃないの?と思っていたらとんでもない!
なんでも、漢方薬もおおきく以下の3種類に分かれるそうで。
上品(じょうほん)→作用が穏やかで、長期間飲み続けて体質改善を図ることができる。健康食品的な使い方が可能。
中品(ちゅうほん)→少量であれば、おだやかな作用で病を水際で食い止めることができる。
下品(げぼん)→発症後にもよく効くが、西洋薬と同じで副作用もおきやすい。量や飲む期間には注意が必要。
麻黄湯は、中品(ちゅうほん)に属するそうですが、いやはやなかなかの過激な作用。
また、漢方薬はおおざっぱに『体力が充実した人向け』、『体力が中程度の人向け』、『体力がない人向け』にも分けられ、麻黄湯は実は『体力が充実している人向け』のお薬。どうやら体力がいまいちの私には強すぎるお薬だったようです…。
よく効くからとダラダラ薬を飲み続けると痛い目に遭うという好例を、我が身をもって証明してしまったのでした(T . T)とほほ。
ところで最近は、抗インフルエンザウイルス薬であるタミフル、リレンザ、イナビルにもきちんと予防効果が認められ、家族内で感染者が出た場合、病院でもお願いすれば、同居の家族にも予防処置で処方してもらえるケースもあるようです(ただしあくまでも予防のため、健康保険は効きません)。↓
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/flu/topics/201401/534710.html
ただ、これらのお薬はインフルエンザウイルスに対抗する強力なものなので、こどもや他に薬を飲んでいる方など、頼んでも止められることもあります。
やはり、漢方であれ、西洋薬であれ、本来は症状が出てから飲むと規定されている薬を、予防処置でむやみやたらに飲むのはいかんのですね‥。
とりあえず、今回の麻黄湯使用で得た教訓。
これは間違いなくインフルの潜伏期だ!という時に緊急避難的に使うのはあり!でも、節々の痛みが消えたらさっさと飲むのをやめるべき!というとこでしょうか?色々勉強になりました。あ、それから、別の基礎疾患があったりして、体力ヒョロヒョロの人は自己判断で飲むのはやめてね!
(これは個人の体験です。読んで実際に使うかどうかはご自身の判断でお願いします)
閑話休題、今回の騒動の中心になった家人といえば。
予防接種を打っていたせいか、頭痛などの症状もそんなに辛くなかったらしく。熱も下がった後の出社禁止の5日間、暇を持て余しまくり。
YouTubeで何故かこんこんと怪談話のチャンネルを探して視聴しまくり、仕事から帰って来て部屋を覗いた私をとっ捕まえては、こんこんとその日仕入れた怪談の内容を聞かせてくれたのでした。
いや、なんで別の部屋で寝てる時に限ってそういうことするかなー(−_−#)怖いやん…‥。
※このコラムは2019年1月に、しんきゅうコンパスに掲載したものに加筆修正いたしました。
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はり灸指圧治療 ぬくまる屋 店主あいざわゆきこ
【注意!】※漢方薬も「薬」です。普段から常用している薬がある場合、購入するまえに薬局の薬剤師さんにご相談の上、自己責任でご使用ください。
特に『麻黄湯』の場合、向精神薬や、喘息の発作を抑える薬などを使用されている方は、成分が重複する可能性があります。飲む前に必ずかかりつけのお医者様にご相談くださいね。