【健康コラム】湿気とむくみと女子のお悩み
2019
10/8
秋です。運動会などにふさわしい季節のはずなのに、なんだかここのところ変な感じ。カラっとした過ごしやすい陽気が続いたかと思えば、じめじめじっとり残暑で雨がふってきたり。ふー、暑い感じですね。乙女心と秋の空…とはよく言われますが、今年は変わり身がはやいにも程があります。
こんな季節は、なんだか全身がだるい、脚がむくむ、おなかを下し気味、腰がおもだるい……なんて症状が出て来ている人も多いのではないかしら?
それは、きっとこの湿気が身体に悪さをしているせいです。東洋医学では、湿気が身体に及ぼす悪い影響のことを、まとめて「湿邪(しつじゃ)」と呼んでいます。
では、湿気は身体にどんな悪さをするのでしょうか?以下鍼灸学校で使っていた教科書より一部抜粋しますね。
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1.湿は陰性の邪気で人体の下部を犯しやすい(下注性)
湿は水に似て、下にに流れる性質がある。そのため湿邪は、人体の下部を犯すことが多い。
例えば、むくみなどは下肢に著明に現れる。その他帯下(筆者注;おりもののこと)脚気、下痢など下半身の症状が現れやすい。
2.湿は重く、停滞する(重濁性、粘滞性)
湿邪が体内に侵入して、陽気(筆者注;主に身体の表面を流れていると考えられている気のこと。衛気とも呼ばれ、外から侵襲してくるものに対するバリアのような役割を果たしていると思われている)が損なわれると、頭や身体が重く、四肢がだるいなどの症状が現れる。
また湿邪が関節に滞ると、関節が痛み腫れる。これを体重節痛という。
湿邪には、動きが遅く停滞する性質があるので、湿邪による病は治りにくく、繰り返し再発することもある。
3.湿は脾胃を犯しやすい
湿邪が脾胃を犯して、消化吸収の能力を損ない、津液(筆者注;『しんえき』と読む。東洋医学では体内を流れる血液以外の水分の総称。唾液やリンパ液、細胞間質液などが相当するか?)を運ぶ機能が悪くなると、下痢、尿量減少、腹水、むくみなどの症状が現れる。
4.自然界以外の湿邪
天候の湿邪以外にも、汗で濡れた下着を長く着た場合などにも湿邪による疾病になることがある。現代では汗を吸い取りにくい化学繊維の下着や、パンティーストッキングなどを着用することにより、湿邪による病を引き起こすことがある。
社団法人東洋療法学校協会編:『東洋医学概論』より
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ま、ものすごくアバウトに言えばですね、湿気の多い気候の時は、身体の下半身に水がうまく流れずに溜まって、そいつが身体をひやしたり、胃の働きを抑えて消化をわるくしたりするんだなーって、考えていただければ。そりゃだるいはずですわ。
ところで、上記3に「湿は脾胃を犯す」とありますが、「脾胃」ってなんでしょう?『胃』はおわかりかと思いますが、腹の中にあって、食べ物を消化したり、ストレスたまると穴が空いたりする器官です。さて問題は『脾』。これはなんでしょう?
古代中国の解剖によると、『脾』は、胃とコンビで働いて、飲食物の消化や吸収をたすけて、食べ物を気や血液、津液(リンパ液や漿液のようなもの)に分解して全身に送り出す臓器のようです。
ちなみに写真は『類経図翼』という1500〜1600年代あたりに描かれた、中国の解体新書のような本に載っている解剖図。怪しい。
いろいろ調べていくと、甘いものやお酒をのみすぎるとよくないとか、どうやら現代でいうところの膵臓の働きに近いです。
なお、古代中国の人達は、それらの体内の臓器が、それぞれ全身の身体の生理機能に関する重要な役割を担っていると考えていました。
では、『脾』の役割はなにかというと、以下の3点。
運化(食べ物を吸収して気や血、津液に変える)
昇清(気や血、津液を胃から上の肺へおくる。結果、気がめぐることで肌肉に張りを与える。他の内臓が下垂しないように、つなぎとめる)
統血(血液を血管の外に漏らさないようにして、全身をうまく巡らせるようにする)
湿気で脾胃が犯されても、そのままほったらかしにしておくと、これらの機能も衰えてきます。そうすると、どんなことが起きるか?
食欲不振から始まり、腹痛、下痢、肌荒れ、全身倦怠、無力、血尿、不正性器出血など……。まあ、怖い!特に女子にとっては肌荒れと不正性器出血はとてもいやな症状!
こうなるまえに、さっさと身体に侵入してくる湿邪を追い払ってしまいましょう。
1.まずは、現代のありがたい文明を使って、空調で除湿をかけるが◎。しかし、これだと身体が冷えちゃう人も多いんですよねー(-_-;)。
2.そんなときは、胃のあたりをカイロなどであたためる。東洋医学での消化は、胃で食べ物を『熱によって腐熟』させ、脾で『もんで砕く』のだそうで。温めると、たしかに食後の重だるい感じは軽減されます。そして、暑いかもしれないけれど、あまり冷たいものを、がぶがぶ食べたり飲んだりしない。
3.それでもだるさが消えないときは、脾の経絡上に湿邪が既に入り込んでるかもしれません。こんなときは、脾の経絡が身体の表面を走っている、ふくらはぎの内側から膝の内側〜内股を、温めてもんでみる(↓方法はこちらをご参照ください)。
ホットパックを作るのが面倒だったら、お風呂の中で温まりながらでもいいですよ。
厳密に言うと、脚の内側には脾だけでなく、肝、腎の経絡も走っているのですが、細かいことは気にしない。まとめてもんじゃってください。掌で大きくおさえれば、まず全部の経絡にあたります。自分が気持ちいいーって感じるのが大切。
それでもなんかダメ、すっきりしない……というときは、お近くの鍼灸院で鍼灸をレッツトライ!
実は私も湿気に弱いんですよー(;_;)。湿気に対抗する方法を、自分の身体で常に試しております。一緒にこの辛い季節を乗り切りましょう!
※この記事は2017年6月に「しんきゅうコンパス」コラム欄に掲載したものを加筆修正したものです。
西川口 蕨 鍼灸マッサージ
はり灸指圧治療ぬくまる屋店主 あいざわゆきこ